サンプリング定理が帯域幅のみに依存し、周波数の基準値に依存しないことの証明
1. 概要
サンプリング定理(標本化定理)とは、帯域制限された信号についてその帯域幅の半分の周波数で信号を測定すれば、元の信号を完全に再現できるという定理である。数学的には以下のようにしばしば表現される1,2。
という関係式で完全に復元される。
この証明は、例えば引用元の参考文献を参照すれば書いてあるので気になる方は各自読んでほしい。甘利さんの本は、シャノンの論文で触れているサンプリング定理の簡単な証明過程をより丁寧に補足して説明してあった。
また、ここでは敢えて「よく見られるサンプリング定理」というクドい言い回しをしている。というのも、本定理の真に強力なところは、帯域が[Hz]から数えて[Hz]ではなくても、任意の周波数[Hz]から[Hz]の帯域幅のみを持つ信号に対しても成立することだ。
シャノンによる論文のサンプリング定理(式(1))の証明後にも以下のような記述のみがある。
"A similar result is true if the band W does not start at zero frequency but at some higher value, and can be proved by a linear translation (corresponding physically to single-sideband modulation) of the zero-frequency case. "
しかしこの証明をググってみても全く出てこない(というかちゃんとわかる人たちには自明過ぎてわざわざ数式にする意味がないのだろう)。仕方ないので正しいと思われる証明を自力で行ったのでメモとして残しておくことにした。
2.問題設定と証明
改めて、どのような問題を解くか以下のように整理する。前述した「よく見られるサンプリング定理」と比較して「真のサンプリング定理」と呼ぶことにする。
証明
信号のフーリエ変換は、において、
のフーリエ逆変換は、, においてより、
ところで、フーリエ変換の性質には次のような関係がある。
これを用いると、
途中式で、の変数変換も行っている。以上より、式(3)は、
式(4)は、信号が、[Hz]から[Hz]に帯域制限されているときののフーリエ逆変換の結果に他ならない。すなわち、「真のサンプリング定理」の証明はこれ以降、「よく見られるサンプリング定理」と全く同じ議論で行うことができる。
3.参考文献
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Shannon, C. E. (1949). Communication in the presence of noise. Proceedings of the IRE, 37(1), 10-21.↩